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真田丸にみる秀吉の遺言状

2016-08-27

 NHKの大河ドラマ「真田丸」第31回「終焉」では、死期の迫る秀吉の遺言状を巡り対立する家康と三成の攻防が描かれていました。遺言状の書き替えや書き足しなどもありましたが、現在の遺言での取扱いはどのようになるのか、疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。

 遺言が複数ある場合、新しい日付のものが優先されます。これは、法律では、新しい遺言書によって、古い遺言書の内容は取り消されたものと見なされるからです。

 自筆遺言については、訂正というかたちで、書き足しもできないことはありません。しかしその場合は、通常の加除訂正の方法によります。つまり、1)間違った部分を訂正部分が読み取れるように二重線で消し、その近くに正しい文言を記載する、2)訂正した部分に訂正印を押す、3)欄外の空白部分に「○行目、○字削除、○字加入、署名」を記載するといった手順を踏まなければなりません。
 ドラマでは、右端の余白に、追記事項を記す方法をとっていましたので、「以上」と記すことにより、追記を認めないということになったのでしょう。

 ところで、現在でも、遺言のこのような性質から、その真贋や有効性が問われ訴訟となることも珍しくないようです。有名なところでは、帆布店の相続、変わりどころでは花押の押された遺言の有効性が問われたものがあります。そこで、遺言ではなく、信託を利用して、遺贈と同じ効果を持たせようとする試みが注目されています。

 確かに、遺言は、被相続人の一方的な行為ですので、遺贈を受ける方にとっては、その地位が安定しないというリスクがあります。その点、信託は契約ですので、契約者の地位が安定されるという面があります。

 では、秀吉の場合に、信託の方法をとっていたとしたらどうでしょうか?
まず、信頼できる受託者が、その時代では存在しないということはあります。ですが、受託者が確保できたとしても、信託自体の性質による限界があります。

 信託の本質は契約の束です。ですので、生じうるあらゆる事態に想定して設計する必要があります。知将三成がいかに想定しようと、家康側は契約の穴をついて攻勢にでるでしょう。あの時代ならば、契約が履行されないリスクもありますしね。

 とはいえ、信託の活用により、遺言の書き替えなどのリスクに備えるというのは、大変有効な方法です。検討してみられる価値は十分にあると思います。

特定障害者に対する贈与税の非課税

2016-08-24

 障害者の方の生活の安定を図る方法として、信託を利用するものがあります。
基本的には、親族の方が委託者となり、信託銀行を受託者とし、扶養信託契約を締結し、障害者である受益者の方が定期的に生活資金等を受け取る仕組みです。
委託者と受益者が異なる信託ですので、「他益信託」となり、原則として信託の際、障害者である受益者の方が、その親族である委託者から贈与を受けたとして、贈与税が課されます。

 しかし、それでは、障害者の方の生活を支援する効果が減らされてしまいますので、一定の障害者扶養信託契約につきましては、信託の際、一定の金額については贈与税を非課税とする特例が設けられています。

 対象となる信託は、「特定贈与信託」という商品名で取り扱われています。対象となる障害者は特定障害者といい、重度の心身障がい者、中軽度の知的障がい者および障害等級2級または3級の精神障がい者等となります。

 受益者への給付方法は、各信託契約により定められていますが、受託金額6000万円の場合、信託期間を最長30年間とし、毎年200万円給付するとした例があります。また、商品自体には元本割れのリスクがある他、手数料の負担も生じます。運用益については所得税が課税されることになります。 

 特定障害者が死亡した際の残余財産は、その相続人または受遺者に交付されます。また、信託する際に、ボランティア・障害者団体や社会福祉施設等を指定しておくと、残余財産を寄附して他の障害者のために活用することもできます。

 肝心の非課税限度額ですが、その信託受益権の価額のうち、重度の方に特定障害者の方については、6000万円、それ以外の特定障害者の方については3000万円までの金額となります。
 
 特定を受けるためには、信託の際に信託会社の営業所等を経由して「障害者非課税信託申告書」に次の書類を添えて、納税地の所轄税務署長に提出することとなります。

① 特定障害者扶養信託契約書の写し
② 特定障害者(特別障害者を除く。)又は特別障害者であることを証する書類
③ 信託受益権の価額の計算の明細書
④ 特定障害者の住民票の写し

 

8月14日(日)は相続カフェの日です。

2016-08-07

来る8月14日(日)は相続カフェの日です。

 お盆休み中で、皆さんで集まられることも多いかと思います。

 この機会に、ご相談にいらっしゃませんか。

 ミニ冊子などもご用意してお待ちしております。

住宅取得等資金の贈与特例

2016-08-07

 消費税率引上げ時期の変更に伴い、住宅取得等資金の贈与特例の非課税限度額に関して改正が行われる見込みです。

 住宅取得等資金の贈与特例とは、父母や祖父母から住宅を取得等するための資金の贈与を受けたときに、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その資金をもって、自分が住むための家屋の新築、取得、増改築等の対価に充て、実際に新築若しくは取得又は増改築等をし、その日までにその家屋に住み始めたとき、又は、なるべく早く住み始めることが確実であるときは、贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定金額について、贈与税が非課税となる制度です。

 この「一定金額」が住宅用家屋の取得等のための契約締結期間に応じ、それぞれ異なることとなるのですが、このほどこの対応期間が改正される見込みです。
 改正後の非課税金額は次にようになります。なお、括弧内の金額は耐震等級2以上であること又は免震建築物であること)に該当する住宅用家屋であること等について、一定の書類により証明された場合です。

イ 次のロ以外の場合
●平成28年1月~平成32年3月の契約締結の場合
 700万円(1200万円)
●平成32年4月~平成33年3月
 500万円(1000万円)
●平成33年4月~平成33年12月
 300万円(800万円)

ロ 住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合(特別住宅資金非課税限度額)
●平成31年4月~平成32年3月
 2500万円(3000万円)
●平成32年4月~平成33年3月
 1000万円(1500万円)
●平成33年4月~平成33年12月
 700万円(1200万円)
 
 住宅取得等資金の贈与特例については、贈与を受ける方の要件も重要ですので、確認しておきましょう。次の(1)~(4)の要件をすべて満たさなければなりません。

(1) 次のいずれかに該当する者であること。
イ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
ハ 贈与を受けた時に日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有していること。

(2) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。
なお、直系卑属とは子や孫などのことですが、子や孫などの配偶者は含まれないので、注意しましょう。

(3) 贈与を受けた年の1月1において20歳以上であること。
1月1日で判定ですので、ここも注意です。

(4) 贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であること。

 住宅取得等資金の贈与特例については、住宅についての駆け込み需要がなくなったことから、非課税限度額の改正を期待するむきもあるようです。一方、税率引上げ時期変更により、財政健全化の要請もありますので、今後の動きは何ともいえないというのが、今現在の状況です。

相続税申告書の新たな添付書類

2016-07-26

 まだかまだかと待っておりました、「平成28年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)」が6月20日に国税庁のホームページに掲載され、また、今月に入りまして、平成28年分の路線価図等が公開されましたことにより、当事務所の業務も俄然熱気を帯びて参りました。
 そして、ここに来て注意事項です。
 平成28年相続開始分より、相続税の申告書にマイナンバーを記入することが、必要となりました。そこで、そのマイナンバーについて、税務署にて、(1)番号確認を行うための書類と、(2)身元確認を行うための書類が、新たに添付書類として追加されました。
(1)番号確認書類(マイナンバー(12桁)を確認できる書類)として次に掲げるいずれかの書類
・マイナンバーカード(個人番号カード)【裏面】の写し
・通知カードの写し
・住民票の写し(マイナンバーの記載があるものに限ります。)
(2)身元確認書類(記載されたマイナンバーの持ち主であることを確認できる書類)として次に掲げるいずれかの書類
・マイナンバーカード(個人番号カード)【表面】の写し
・運転免許証の写し
・身体障害者手帳の写し
・パスポートの写し
・在留カードの写し
・公的医療保険の被保険者証の写し
このなかで、マイナンバーの記載がある住民票は、本人しかとることができないので、要注意です。職権や委任状では、請求は可能ですが、住民票そのものは、本人の住所に郵送となります。

6月12日(日)は相続カフェの日です。

2016-06-03

 来る6月12日(日)は相続カフェの日です。

 今回は、14時から、公正証書遺言のミニセミナーを開催します。

 ご参加の方にはミニ冊子も差し上げます。

 どうぞお気軽にお立ち寄りください。

相続登記必要書類について

2016-06-01

 相続登記に必要な書類についてご紹介します。

   *印の書類については、司法書士の職権及び代理人として取得が可能な書面です。

 *ア)被相続人(お亡くなりになったご親族)の死亡から出生に遡る除籍謄本、戸籍謄本等

*イ)被相続人の最後の住所地を証する除住民票

*ウ)登記簿の住所と最後の住所が相違している場合、住所を繋ぐ戸籍の附票

⇒戸籍の附票においても住所が繋がらない場合には、被相続人が不動産を取得した際の権利書が必要となるケースもあります。

 *エ)相続人全員の戸籍謄本

*オ)不動産を取得する相続人の住民票

*カ)相続不動産の平成28年度固定資産税評価証明書

   (相続人から委任状を頂ければ、司法書士にて取得可能)

 キ)相続登記委任状(内容が決定次第、司法書士が作成し、署名捺印を頂きます。)

 ク)本人確認資料(運転免許証等の写し)

 

なお、法定相続分以外で不動産を取得する場合には、上記書面の他に下記の書面が必要となります。

・遺産分割協議を行った場合

遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書

 ・被相続人が遺言をしていた場合

遺言書の原本(遺言書の形式によっては、家裁の検認手続が必要)

 ・相続人の一部が相続放棄をしている場合

   家裁発行の相続放棄申述受理証明書

都度、司法書士と相談しながら、取得依頼をすることも可能です。

上記ご参考になさってください。

戸籍収集費用

2016-06-01

 相続手続きのためには、誰が相続人であるか、法的に確認するために、被相続人の方の出生から死亡までの戸籍を取集する必要があります。被相続人の方が、出生の地から転居することなく亡くなられた場合は、比較的簡単に取集できるため、相続人の方がご自身で取集されてもいいのではないかと思います。

 しかし、2度の戸籍法の改正や転居をされている場合などで、せっかく取集された戸籍では、実際の手続きには不足する場合もあります。

 もし、不動産の名義変更などの手続きを司法書士にお願いすることになるのでしたら、その方に、戸籍の取集からお願いした方が、手間も掛からず、また、その書類一式が、金融機関での名義変更、相続税の申告にそのまま使えるため、コスト面も有利となる場合が多いようです。

 当事務所で戸籍取集を依頼していただいた場合、おおよそ相続人が3名から4名程度とした場合の報酬及び実費は下記の通りとなります。

 ①司法書士の報酬  金6,480円から金10,800円

 ②戸籍実費     金8,400円から金9,900円
  *郵送費込。戸籍(除籍)謄本の取得通数を8通から10通と想定した実費

4月10日は相続カフェの日です。

2016-04-08

 4月10日日曜日は相続カフェの日です。

 無料相談等を行っていますので、どうぞお気軽においで下さい。

相続人に未成年者がいる場合の相続税の申告

2016-02-24

 ご両親に未成年の子という家族で親に相続が発生した場合、遺産分割協議をするためには家庭裁判所で特別代理人の選定をしなければならないとされています。それは次のような理由です。

1.未成年者は、原則として単独で法律行為ができないこと。
 未成年者については、法定代理人(親権者または未成年後見人。一般的には親)の同意があって、初めて完全に有効な法律行為をおこなうことができます。これは民法第5条第1項(未成年者の法律行為)を根拠とします。
 民法では、未成年者は、判断力が備わっていないとされており、不利な内容の契約を結んでしまわないように、強力に保護されているのです。

2.法定代理人と未成年者の利益は相反するため、法定代理人では代理人になれないこと。
 遺産分割協議において、被相続人の配偶者である親と子の利益が相反することとなります。そこで、親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないとされており、そのため遺産分割協議のため、特別代理人の選定をする必要がでてくるのです。

 また、子が2人以上いる場合、それぞれの子の間でも利益相反となるため、それぞれ別の特別代理人を選定しなければなりません。これらは、民法第828条(利益相反)の規定です。

 ところで、そのような場合に、相続税の申告書には、どのように記名押印すべきか、迷うことがあります。選定した特別代理人が記名し、押印することとなるのでしょうか?
 
 結論から言うと、意思能力がないと思われる未成年者(学校に上がる前の幼児など)を除き、未成年者本人が記名押印をすればいいということとなります。
 なぜならば、申告書の提出自体は、一般に法律行為とはされていないのです。したがって、民法第5条の制約は受けないこととなります。ただし、意思能力がないと思われる者については、代理人が行うという整理です。したがってこれは利益相反とは関係がありませんので、親権者が記名押印して構わないということになります。

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