預金は分割の対象じゃない???
預貯金を遺産分割の対象とできるかどうかが争われた裁判について、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)が、双方の意見を聞く弁論を開いたというニュース報道がありました。
この一連の報道について、相続手続きをしたことのある一般の方の感覚だと、???が浮かぶのではないかと思います。
実際の遺産分割では、A銀行の預金は配偶者、B銀行の預金は長男、C銀行の預金は長女などといったように決められるのが一般的であるし、遺産分割協議成立前に、相続人の一人が銀行に対し、自分の法定相続分だけ払戻しを求めるなどの処理は、認められていないからです。
しかし、判例上は預金は民法427条の「可分債権」として扱われています。
相続財産中に預金などの可分債権があるときは、法律上当然分割され、各共同相続人がその法定相続分に応じて(遺言による指定がある場合は、当該指定に応じて)権利を承継するので(最判昭29.4.8ほか)、相続人間で合意なき限り、遺産分割の対象に預金が含まれることはないということです。
この実務と判例の違いはどこからでているのでしょうか?
金融機関については、業務運営態勢の問題として、監督官庁に適切な対応をもとめることができることとなっており、それに従い各金融機関が現状のような手続きを取っているようです(平19.7.10付内閣参質166第61号)。
とはいえ、判例では可分債権とされていることから、今回の審判のような争いが生じるわけで、今回の事案は、約4千万円の預金の相続をめぐって遺族2人が争ったものでした。1人は故人から生前に5千万円を超える贈与を受けたため、もう一方の親族の女性が「生前贈与を考慮せず、法定相続分に従って預金を2分の1(2千万円)ずつ分けるのは不公平だ」と主張し、遺産分割の審判を裁判所に申し立てたということです。
双方の意見を聞く弁論を開いたということで、判例を見直す可能性が高いということです。実務では、預金を含めて遺産分割協議を成立させていますし、調停でも同様です。今回の審理を経て、裁判所も実態に合わせ、判例上も預金を分割協議の対象とすることになるとみられています。