庭先だけを相続した場合の小規模宅地等の特例の適用

2016-10-18

 小規模宅地等の減額特例は、特に地価単価が高く、所有面積がさほど広くない都市部の相続において、相続税の課税価額を押し下げるものとして必須のものです。この特例では、被相続人等の居住の用又は事業の用に供されていた宅地等は、相続人等の生活基盤の維持のために欠くことができないということから、設けられているものです。

 居住用宅地等についての特例は、被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族が、その被相続人の居住の用に供されていた宅地等を相続により取得し、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その建物に居住している場合には、その相続により取得した被相続人の居住の用に供されていた宅地等については、「特定居住用宅地等」に該当し、本件特例の適用を受けることができるとされています。

 簡単に言ってしまうと、相続を機に、相続人が住んでいる土地を手放さざるをえないような事態にならないよう、政策的配慮がされているといったところでしょうか。

 ではもし、被相続人と相続人Aが居住していた家屋の敷地である土地について、その建物がある部分の土地をそこに居住していない相続人Bが相続し、庭先部分を相続人Aが相続した場合、相続人Aが相続した庭先部分について、小規模宅地等の特例の適用はあるのでしょうか? 相続人Aは引き続きその家屋に住み続けるものとします。

 これ、ちょっと考えると、住み続けることに関係なさそうな庭先部分について、居住用宅地の特例が適用されるって、ちょっと変な気がします。実はこれ、関東信越国税局に対し、納税者の方が文書照会した事例なのです。

 関東信越国税局は、この文書照会に対し、次のように回答しています。

 相続人Aが相続により取得するX部分の土地と相続人Bが相続により取得するY部分の土地は、事実関係に記載のとおり、一体として「相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で被相続人が所有していたものの敷地の用に供されていた宅地」であることからすると、居住の用を廃する必要があるかどうかにかかわらず、X部分の土地は、「相続の開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で被相続人が所有していたものの敷地の用に供されていた宅地」に該当すると考えます。
 また、相続人Aは、被相続人甲の親族であり、「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた者」に該当します。
 したがって、相続人AがX部分の土地を相続により取得し、申告期限まで引き続きX部分の土地を有し、かつ、家屋に居住している場合には、X部分の土地は、「特定居住用宅地等」として、本件特例の対象になると考えられます。

 つまり庭先部分についても、被相続人の住んでいた家屋の敷地には間違いないので、小規模宅地等の減額特例が適用されると認めたものです。実際に、事例のように分割することはそんなに多くないでしょうが、諸事情により、このような分割となることもないとはいえません。そのときは、この照会事例、及びその考え方をを思い出していただければ幸いです。

 

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