収益物件の持分相続における家族信託の利用

2016-11-20

 被相続人に貸しアパートや駐車場などがある場合に、遺産分割で個々の物件毎に相続人が取得するとなると、不平等が生じたりするため、共有にて取得するとの方法が採られることがあります。

 しかし、共有状態にある不動産の管理運用に当たっては、将来的にその不動産の管理や処分で足並みが揃わなくなったりすることがあります。ことがこじれて、共有物の買取りをする業者などが介入してきたりするとさらに問題が複雑になってしまします。

 そこで、信託のしくみの利用により、管理権や処分権の制限をしたり、移転をすることにより、これらのコントロールを容易にすることができます。また、跡継ぎ遺贈型信託の利用により、これらの収益物件を、妻から子へと円滑に引き継がせることも可能です。

 例えば、父、母、子3人といった家族構成で考えてみます。父が貸しアパート等の収益物件を保有しているとします。生前に、父(委託者)はこれらの収益物件を信託財産とし、子の一人を受託者とし、自分を受益者として信託契約を結びます。その際、将来何らかの要因により、受益者である父が意思表示のできない状態となったときに備えて、受益者の指示なく管理運用可能のように定めることもできます。

 さらに、この契約で、父(受益者)死亡に備えて第二次受益者、第三次受益者を定めることができます。この第二次受益者に受益者の妻(母)、第三次受益者に子3人というように定めていくこともできます。つまり、遺言のような機能を持たせることになりますので、このような信託を、遺言代用信託といいます。しかし、遺言が自分の死後のことしか決められないのに対し、信託では、上記のようにその後の財産の行方まで指定することができるのです。

 なお、仮に次男を受託者とすると考えた場合、第二次相続の際、受託者が受益者を兼ねることになり、それはどうかなという疑問が生じるかと思います。しかし、この例のように、受益者が複数人の場合は、受託者の一人が受益者と兼ねることも可能です。

 この信託契約において、当初は委託者(父)=受益者(父)の自益信託でしたが、父の相続発生により、母が受益者の地位を引き継ぐことになります。母は対価なしにその受益権を相続により取得していますから、ここで相続税の課税が発生することになります。母の相続発生により受益権を取得することとなる子たちについても、同様に相続税の課税が発生します。このあたりは、現物資産を相続した場合も、信託受益権を相続した場合も同じと考えて下さい。

 この信託契約では、最終的に子3人が共有者のような関係になりますが、共有物件のときと異なり、管理権、処分権は契約によりコントロールされます。ところで、子についても、相続が開始する時が来るわけですが、どのタイミングで信託を終了させるのかは、契約により決めることができるので、共有物件のように持分が細分化されることも防ぐことができます。

 

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