無償で土地を貸借する場合
他人の不動産を利用する場合は、通常はそれなりの賃料をやりとりします。他人の土地の上に家を建てさせてもらう場合、それにより、土地の価額が底地価額となり、大幅に下落することから、権利金の支払いをするのです。
しかし、親族間や自分が社長である同族会社に対してであれば、賃料や権利金のやりとりなしに、ただで貸す、などということも珍しいことではありません。その場合は、民法でいうところの賃貸借でなく、使用貸借に該当するとも考えられます。
使用貸借であれば、使用する側に返還義務があるという点で、当事者間の信頼関係のうえに成り立った契約となります。使用貸借では、いかなる意味においても対第三者の対抗要件がありませんし、返還時期も使用・収益の目的も定めていなかったときは、地主はいつでも返還請求ができます。また、借主が死亡すれば、その使用貸借は終了します。
ただ、法人が絡む借地権については、法人は利益追求団体であるということから、使用貸借というのは原則として認められていません。税務上は無償返還届出書という制度が認められていますが、ここでは割愛します。
一方、個人は、必ずしも利益追求を目的として行動しないので、建物所有を目的とする場合であっても、使用貸借契約が認められます。
しかし、個人間の取引であっても、賃料を支払うようなものであれば、やはり地主の権利は底地のみとなってしまうことから、通常支払うべき権利金の収受が必要となるのです。
では、個人間における全くの使用貸借であれば、課税関係は生じないかとなると、それも少し違います。借主がその土地で使用・収益することにより、獲得した利益については、地主から無償で得たものですので、そこに、みなし贈与として認定される余地があるのです。