相続や贈与などにおける取引相場のない株式の評価の見直し

2016-12-27

 税法の世界においては、同族会社株式のような取引相場のない株式の評価について、その会社の資産及び負債(つまりB/Sですね。)を基にした純資産価額により評価する方法(純資産価額方式)と、事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に比準する方法(類似業種比準方式)をミックスして計算することになります。

29年度税制改正では,非上場株の評価方法の「類似業種比準方式」などについて、見直しがされる予定です。

1.「類似業種の株価」の採り方についての改正

 現行の類似業種比準方式では、次のようにして株価を計算します。

  A×(b÷B+(c÷C)×3+d÷D)÷5×斟酌率

 算式中の「A」、「b」、「c」、「d」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次によります。
 「A」=類似業種の株価
 「b」=評価しようとする会社(以下「評価会社」)の1株当たりの配当金額
 「c」=評価会社の1株当たりの利益金額
 「d」=評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によつて計算した金額)
 「B」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額
 「C」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額
 「D」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によつて計算した金額)

 この類似業種のデータは国税庁のHPで公表されています。

 そしてこの「A」の値については、次のいずれかを選択します。
・課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの
・類似業種の前年平均株価

 しかし、この方法で計算すると、評価会社の業績は変わらないのに、上場株式の株価が変動することにより、評価額に大きく影響することになります。
 特に、アベノミクス初期段階で、上場株式の株価が急上昇し、贈与や譲渡を予定していた非上場会社の担当者が大いに慌てたというようなことが起こりました。

 そこで、改正案では、この「A」の値については、次のいずれかを選択するとしています。
・課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの
・類似業種の前年平均株価
・課税時期の属する月以前2年間平均

 「課税時期の属する月以前2年間平均」が選択肢の1つに入ることで、より平準化された株価を採用できることになるということです。

2.類似業種の比準要素についての改正
 次の改正は、上記の国税庁が提供するデータについての改正です。
 類似業種の1株当たりの「配当金額」、「利益金額」、「簿価純資産価額」や、類似業種の株価は、業種目別に上場会社の数値を平均して算定されているものですが、これまでは、上場会社単体の決算を基に類似業種の比準要素が算定されていたものが、連結決算を基にすることとされます。

3.比準要素の比重についての改正
 上記の計算式のように、現行の類似業種比準価額の計算では、比準要素のうち、「利益金額」だけ、他の要素と異なり、3倍にして評価されます。これは、平成12年の通達改正で、株の価値は会社の収益力に強く影響されると考えられ、そのような評価方法となったものです。
 しかし、昨今の上場会社のデータに基づき検証作業等をした結果、収益力が他の要素と比べ特別に株の価格に影響しないということで、各比準要素は1:1:1の比準で評価額を計算することととされます。

 つまり、上記の計算式は次のようになります。

  A×(b÷B+c÷C+d÷D)÷5×斟酌率

 これらの改正は、平成29年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用されることとなります。

 

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