海外不動産投資
この何年かの間に海外不動産投資を検討される方が増えてきたのかなと感じます。話題として耳にすることもありますし、今夏、大阪で女性税理士連盟の定期総会に出席した際、同じフロアで「減価償却を使ったタックスメリット」という名の証券会社のセミナーが行われているのを目にしました。
海外不動産投資には、次のような仕組みにより、節税メリットがあるとされています。
1.減価償却の活用によって節税効果を得られる
海外不動産であっても、日本での申告では、日本の減価償却制度が適用され、法定耐用年数により償却することになるのですが、中古不動産、特に法定耐用年数を過ぎた物件等を取得することにより、毎年の減価償却費を多くすることができます。これにより不動産所得が赤字になっても、給与所得などと損益通算ができ、その年の課税所得を減少させることができます。
2.売却時に低い税率が適用される
減価償却が早くできるということは、売却時に売却原価が少ないため、売却益が計上されるということになります。しかし、5年間以上保有してその後に売却するのであれば、譲渡所得の税率は20%の分離課税となります。
節税メリット以外にも、円安による為替メリットや資産の国際分散によるリスク回避などのメリットも考えられますが、デメリットとしても、コンサルタント会社や現地税理士への手数料の支払いが生じます。
また、海外に預貯金や有価証券、不動産など合計5千万円を超える財産を保有する人に「国外財産調書」の提出が義務付けられており、こちらの手続きもする必要があります。
(冒頭のホテル開催のセミナーは、この国外財産調書セミナーとセットになっていました。)
こうした中、「海外中古物件利用の節税策 富裕層に広がる」というNHKの報道がありました。会計検査院が平成25年の税務申告で海外に不動産を所有していた331人の高所得者を調べたところ、287人が減価償却費を計上しており、節税効果が高くなる償却までの期間が短い物件の購入を繰り返している人も確認されたということです。
ここ最近、会計検査院の指摘から税制改正が行われるというパターンができてきているように思います。海外不動産投資についても、何らかな節税封じ策がとられる可能性が高いと推測されます。年末の税制改正大綱を注目したいところです。