医療費控除と債務控除

2014-11-13

所得税の確定申告の際、医療費控除だけ受けられる方も多いかと思います。
医療費控除として、自身の所得金額から控除できるのは、自分の分、妻又は夫の分、そして、生計を一にする親族の分を支払った場合です。

この「生計を一」というのは、簡単に言えばお財布が共通ということです。ですので、親族の分を「支払った」というのは、この共通な財布から出て行ったということを意味し、病院の窓口で、実際に自分の財布から、直接支払った場合に限りません。

相続が発生した場合、亡くなられた被相続人について、その亡くなられた年の医療費を誰の所得から控除するかという問題があります。
当事務所にて、ご依頼を受ける相続の場合も、通院中であったり、何度か入退院をされていた方がほとんどです。生前は、ご本人や配偶者が医療費をお支払いになり、病院で亡くなられ、最後の医療費を親族の方が精算されています。
この医療費は、誰の所得から控除することができるか、ということです。

例えば、26年6月3日に相続が発生したとします。26年中は、2月10日に8万5千円、4月26日に5万3千円、そして、亡くなられた後、6月5日に3万6千円の医療費を支払ったとします。これらの医療費は、すべて、亡くなられた方の預金から支払いました。となると、すべて、亡くなられた方の、26年の所得税の確定申告(=最後の確定申告、準確定申告)で、所得金額から控除することになるのでしょうか。

答えは否です。
医療費控除の対象となる医療費は、その年中に実際に支払われた金額に限られ、未払の医療費は現実に支払われるまで医療費控除の対象とはなりません。このため、被相続人の死亡後に支払われた医療費は、たとえ、亡くなられた方の預金などから支払われた場合であっても、亡くなられた方が支払ったことにはなりません。
したがって、2月に支払った分、4月に支払った分については、亡くなられた方の、準確定申告で、所得金額から控除することができるのですが、亡くなられた後、6月5日に支払った3万6千円については、準確定申告で控除することはできません。

では、亡くなられた後で支払った医療費はどうなるのか。その医療費を負担した親族が、その医療費の請求の基となった治療等を被相続人が受けた時に、被相続人と生計を一にしていたのであれば、その医療費は、相続人であるその親族の医療費控除の対象となります。
設例の場合ですと、医療費を支払った被相続人の預金を取得した人が、通常は医療費を負担した人となります。

さらに、この医療費は、被相続人の債務ですので、その医療費を負担した親族が相続人や包括受遺者(相続時精算課税の適用を受ける贈与により財産をもらった人を含みます。)で、日本国内に住所がある方ならば、相続税を計算するときは、遺産総額から差し引くことができます。

 

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