土地建物の交換をしたとき

2015-11-23

 土地や建物について、使い勝手などの理由から、他の方が所有する同じような土地や建物に交換することもよく行われています。よく行われるのが近接地の交換で、話し合いで行われることが多いようです。
 その際に、気になるのが課税関係で、当事務所でも事前に相談を受けることがあります。

 個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。
 この特例を受けるためには、次の6つの要件を満たす必要があります。

(1) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
(2) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
(3) 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
(4) 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
(5) 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
(6) 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。

 この特例の適用にあたって、不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産は、棚卸資産となるため、対象になりません。

 で、このうちの(6)の要件について。交換譲渡しようとする土地の価額が500万円で交換取得しようとする土地の価額が400万円の場合、普通は取得しようとする土地の他に100万円をもらい、交換契約を成立させます。
 この実際にやりとりする100万円を交換差金といいます。これは、高いほうの土地の価額500万円の20%以内ですから、この(6)の要件を満たします。
 でも、交換譲渡しようとする土地の価額が500万円で、交換取得しようとする土地の価額が300万円ならば、時価の差額は200万円となって、500万円×20%=100万円より大きいので、(6)の要件を満たしません。

 それならば、500万円の土地のうち、持分5分の3を交換とし、5分の2を売買とすることができるならば、少なくとも5分の3部分は、譲渡所得税は課税されないのではないかと思う方がいます。このスキームはOKでしょうか?

 これについては所得税基本通達58-9に次の規定があります。
 「一の資産につき、その一部分については交換とし、他の部分については売買としているときは、法第58条(固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例) の規定の適用については、当該他の部分を含めて交換があつたものとし、売買代金は交換差金等とする。」

 この規定のポイントは「一の資産」にあります。上記の例では、「500万円の土地」が「一の資産」に該当します。ですので、上記の例では、全体として、交換特例の適用はありません。

 では、建物とその付属設備を一体として交換した場合、付属設備の部分だけを売買とすればどうなのかという疑問が生じます。
 この場合の結論もNO!です。交換特例の適用にあたっては、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれることになるため、建物とその附属設備を一体として交換した場合は、建物とその附属設備で「一の資産」となるからです(所得税法58条1項2号)。

 それならば、土地については交換契約を締結し建物については売買契約を締結した場合はどのようになるのでしょう。それが、国税庁のHPに照会事例として掲載されています。

 「甲は乙との間で、甲所有のA土地と、乙所有のB土地との交換契約を締結するとともに、A土地の上に存する甲所有のC建物については、乙に売買する旨の売買契約を締結することを予定しています」というものです。この場合も売買代金が交換差金として取り扱われるのでしょうか?

 結論から申しまして、その場合はこの売買代金が交換差金として取り扱われることはありません。
 というのは、さきほどの「一の資産」とは、所得税法58条1項各号に掲げる資産の種類の区分ごと(すなわち同一資産の種類ごと)の資産をいいます。
 それぞれの資産の種類は次のようになります。

一 土地(建物又は構築物の所有を目的とする地上権及び賃借権並びに農地の上に存する耕作に関する権利を含む。)
二 建物(これに附属する設備及び構築物を含む。)
三 機械及び装置
四 船舶
五 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)

 つまり、土地と建物は別の種類の資産となりますので、土地については交換特例を適用し、建物については売買契約により譲渡しても、全体で交換を行ったとして、課税されることはないということとなります。

 

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