兄弟相続の場合の注意点3~遺留分

2017-02-11

 兄弟相続となる場合の相続分は、配偶者3/4に対し、兄弟合計で1/4となります。
兄弟間での割合は等しく、甥・姪が代襲相続人となる場合は、以前死亡等した相続人の相続分に対してその代襲相続人で頭割りした割合となります。

 ところで、相続人に法律上確保された最低限度の財産として遺留分が認められますが、兄弟相続の場合はこの遺留分は認められていません。つまり、その相続について遺言があり、財産をもらえない相続人がいたとしても、兄弟相続の場合は遺留分減殺請求はできません。

 では、相続人のなかに返済困難な多額の債務を有する場合に、その相続人には、遺産を分割しない旨合意した場合はどのようになるのでしょうか?
 このような場合、多額の債務を有する相続人が遺産をもらっても、債務者にとられるだけです。ですので、債務のない相続人だけで遺産を分割します。多額の債務を有する相続人は、自己破産をし、暫く立ってから自分の相続分を戻してもらおうとするわけです。
 このようなことをすれば、当然、債権者は怒ります。

 兄弟相続の場合は遺留分がないため、債権者が債務者に、他の相続人に対して遺留分減殺請求をするよう求めることはできません。それでも、多額の債務を有する相続人が遺産をもらわないような分割協議が問題となるようなことはあるのでしょうか?

 実は、遺産分協議が詐害行為とされた最高裁判決があります(最高裁平成11年6月11日判決 判例時報1682号54頁)。その事案では、被相続人は夫、法定相続人は妻と2人の子、債務者は保証債務の履行を求められた妻でした。法定相続人3名は遺産分割協議を行い、遺産を子2人の共有とし妻は何も取得しないことにし、その後、妻は自己破産の申立をしました。

 債権者は、詐害行為取消権に基づいて、2人の子が取得した財産の持ち分3分の1を、妻に対して所有権移転登録手続をすることを求め、裁判所は、原審、控訴審、最高裁とも、遺産分割が詐害行為となるとして、債権者の訴えを認めました。

 ところで、この裁判で認められた債務者である妻の持分は3分の1です。これが相続分ならば2分の1であり、遺留分を根拠とするものであれば4分の1のはずです(注)。なぜ3分の1なのでしょう。
 実は、相続開始により遺産は相続人の間で共有となります。共有者の頭割りということで3分の1となるのです。債務者が被相続人の場合の債務負担割合が相続分となることとは異なります。

 そして、兄弟相続の場合も相続人のなかに多額の債務を有する者がいるときは、その多額債務者に遺産を取得させない分割協議をした場合、詐害行為として訴えられる可能性があります。そのようなケースでは、多額債務者について、相続放棄をするという選択が有効です。相続放棄は詐害行為でないということについては、昭和49年9月20日の最高裁判例があります。

(注) ちなみに遺留分減殺請求は債権者代位の対象とはならないという判決があります(最判・平13.11.22)。

 

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