タワーマンション節税
平成29年度税制改正で、政府・与党は20階建て以上の高層マンションについて、高層階の固定資産税と相続税を引き上げるとの報道がありました。
「タワマン節税」けん制、高層階は増税へ
18年以降の新築で 政府・与党方針
2016/10/25 0:36 日経電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO08745040U6A021C1EE8000/
対象は大都市圏で増える「タワーマンション」と呼ばれる超高層物件で、20階建て以上を想定しているとのこと。
上記の記事では、資産評価システム研究センターが全国の新築高層マンションの分譲価格を調べたところ、最上階の床面積あたりの単価は最下層階より平均46%高かったとあります。
そもそも、タワーマンション節税法は、マンションの一部屋に対する土地の価格の占める割合が低いことを利用したものなのです。相続税の計算では、相続財産を財産評価基本通達で評価しますが、評価通達では、(1)建物については固定資産税評価額で評価すること、(2)共有物件については、持分割合で単純に按分することという計算方法になります。高層階か低層階で固定資産税評価額に差が設けられていないのです。
したがって、特にタワーマンションの高層階については、取得価額と相続税評価額に大きな差が生じるため、相続税の節税になるとされています。また、賃貸の用に供したら、建物は借家の評価となり、首都圏では30%減額となりますし、敷地は貸家建付地の評価になり、大体20~30%減額るという面もあります。
総務省が検討している新しい評価額の仕組みは、高層マンションの中間の階は現行制度と同じ評価額にする一方、中間階よりも高層の階では段階的に引き上げ、低層の階では段階的に引き下げるというものです。記事では、評価額5000万円の建物にかかる固定資産税は単純計算で年70万円。5500万円になれば固定資産税は年77万円に増えるとの計算例を示しています。
この節税防止策は固定資産税評価額を変えるもので、評価通達の改正はないようです。そもそも家屋の固定資産税評価は、再建築価格を基準とする方法が採用されており、階層による評価調整は評価額算定のどの段階で行うのか興味があります。
新しい税制の対象は18年以降に引き渡す新築物件に限定し、既存の物件は今の税制を適用することになります。では、タワーマンション節税のためには、今年から来年が買い時でしょうか?
確かに毎年課される固定資産税という意味ではそのようにいえるかもしれません。とはいえ、現行税制でも、タワーマンションを購入し、財産評価基本通達で評価した場合に、その評価額が適当でないとして、否認された裁決事例(平成23年7月1日非公開裁決例・東裁(諸)平23-1)や、最高裁の否認判決もあります(平成5年10月28日判決)。
相続開始直前にタワーマンションを購入し、相続開始後に売却するような場合には、課税上の弊害があるとして、現行税制でも否認されるということに留意する必要があります。