Archive for the ‘相続税・贈与税関係’ Category

賃貸用不動産を取得した場合の仲介手数料

2016-01-03

 会計検査院が、年末に恒例の税金の無駄遣いを指摘しています。

 このうち、財務省に関するものは、税制改正に繋がったり、税務調査において注目事項となるため、チェックが欠かせません。

 2014年度決算検査報告では、相続税額の2割加算(相続により財産を取得した者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者である場合に所定の方法により計算した金額にその100分の20に相当する金額を加算などした金額をその者の相続税額とするもの)洩れや有価証券の評価に関するもの、合計所得金額が2000万円を超えるのに、住宅取得資金の贈与特例を適用しているもの等が指摘されています。

 ここで取り上げたいのは、不動産所得についてです。

 個人が不動産を貸し付けた場合、受取家賃などの収入金額から必要経費等を控除した金額を不動産所得として、他の所得とともに申告します。しかし、個人が貸付けの用に供する不動産を取得する際に支払った仲介手数料は、賃貸のための経費ではなく、その不動産の取得価額に含めることになります。そして、不動産を譲渡するときに取得費として、譲渡収入から差し引くこととなるのです。

 賃貸用不動産を購入した場合、このように不動産所得の必要経費でなく、その取得価額に含めなければならないものには、使用開始日までの期間に対応する借入金利息や固定資産税の精算金等があります。一方、不動産取得税や登録免許税、収入印紙などは不動産所得の必要経費となります。

 取得価額に含めるべきものを必要経費に算入しないよう注意しましょう。

空き家控除~相続により郷里の家を取得した場合

2015-12-31

 空き家問題がクローズアップされています。人口減少により、住宅が余るとされていましたが、その他にも高齢者が介護施設に入ったりすることにより、人が住まなくなった住宅が増えているようです。そして、このような空き家の発生原因として、相続の発生が挙げられています。

 確かに相続により郷里の家を取得することとなった場合、相続人がその住居にすむことは多くなく、とはいえ、すぐに売却することも少ないことから、管理の行き届かない空き家を生じさせる結果となることとなります。

 そういったこともあり、平成28年度税制改正大綱では、空き家に係る譲渡所得の特別控除として,相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに,被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が,一定の家屋又は除却後の土地を譲渡した場合には,その家屋又は除却後の土地の譲渡益から3,000万円を控除することができる特例を創設するとしています。

 一見よさげな制度ですが、次のような要件が設けられています。

1.相続開始直前に被相続人の居住用家屋で被相続人以外に居住者がいなかった被相続人居住用家屋及びその敷地等を相続により取得したものであること

2.譲渡時に耐震リフォーム等をして現行の耐震基準をクリアしたものであること

 中古住宅を譲渡する場合には、ある程度のリフォームをしなければ買い手がつかないとの現実もありますが、この特例の適用のためには、譲渡前のリフォームが前提となること、例えば、父に相続が発生した後、母が老人ホームに入居したため、空き家となった自宅を譲渡するような場合には適用がないことに注意する必要があります。また、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例、つまり、課税された相続税額の一部を控除できる制度とは、選択適用となるようです。

 この制度は、国会の議論を経て、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡について適用される予定となります。また、細かい内容については、今後の政令の公表を待つこととなります。

遺産の一部のみ分割済の場合の相続税の申告

2015-12-29

 遺産分割協議が行われなかったりして、被相続人の遺産が未分割のまま、相続税の申告期限となった場合、いわゆる法定相続分などの民法の規定による相続分に従って財産を取得したものとして、相続税の課税価格を計算することとされています。

 たとえば、親一人、子供3人の家庭で、親が亡くなったときに、子供たちの間で遺産分割が済んでいないならば、子供達がそれぞれ遺産の3分の1を取得したものとして、相続税の申告をすることとなります。

 では、相続税の申告期限となったときに、遺産の一部しか分割されていない場合は、どのように相続税の課税価格を計算することとなるのかが疑問です。その場合も未分割の部分は民法の相続分に従って、各相続人が取得したものとして、計算するのでしょうか?

 実は、遺産の一部が分割済の場合の課税価格の計算方法には、2つの方法があるのです。このように、すでに分割された部分を無視して、未分割部分だけで民法の規定による相続分で分けて計算する方法を積み上げ方式といいます。これに対して、すでに分割された財産と合わせて、民法の規定による相続分となるよう計算する方法を穴埋め方式といいます。

 どちらの計算方法が正しいのでしょう。これについて、平成27年6月3日の裁決事例では、穴埋め方式が正しいとの判断がされました。課税実務では、このように穴埋め方式により計算せよとされていて、先例として最高裁平成5年5月28日判決があります。また、東京地裁昭和62年10月26日判決でも、穴埋め方式が支持されています。

 穴埋め方式については、実務家を中心に、疑問とする意見も多々あるようです。しかし、現在のところ、穴埋め方式により相続税額は計算するということが、平成27年の裁決例で再確認されたということになります。

贈与税の配偶者控除

2015-12-20

  贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できるという特例です。ただし、あくまでも、贈与税の特例ですので、登録免許税や不動産取得税は課されることとなります。

 贈与税の配偶者控除の特例を使って、相続財産となりそうな居住用不動産を配偶者に移転することができます。また、その不動産に含み益があるならば、売却した場合の3,000万円控除の特例を、事前にその不動産の持分贈与をすることで、夫婦でダブル適用することも見込むことができます。なお、3,000万円控除とは、マイホームを売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例で、自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ることが要件ですので、マイホームの敷地の持分と併せて、マイホーム自体の持分も、配偶者に贈与することがポイントです。

 ところで、平成28年度与党税制改正大綱に次のものがあります。

 贈与税の配偶者控除について、その適用を受けるための申告書に添付すべき 登記事項証明書を、居住用不動産を取得したことを証する書類に変更する。(注)上記の改正は、平成 28 年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る 贈与税について適用する。

 つまり、贈与税の配偶者控除を受けるためには、従来、その贈与を受けた不動産の登記名義の移動が必須でした。ところが、今回の改正案では、不動産登記手続きは必要でなく、贈与契約書を作成し、税務申告書に添付することで、受けることができるとしています。

 この改正により、相続発生直前や居住用不動産譲渡契約直前の贈与契約であっても、それが事実である限り、贈与税の配偶者控除の特例を受けることが可能となりそうです。いろいろな意味で、気にある改正事項ですので、どのような法案となるか注目したいところです。

 

遺産分割未了のまま第二次相続が発生した場合

2015-12-04

 相続税の相談を受けておりますと、いろいろなケースに当たることとなります。

 先日は、父が亡くなったあと、相続手続きを終えないうちに、母が亡くなってしまったという事案でした。

 もし、母の死亡に係る相続税の申告期限までに、父の遺産について母の取得分を零とする遺産の分割が行われているときは、相続人である子たちは、母の死亡に係る相続税の申告をする必要はありません。しかし、母の死亡に係る相続税の申告期限までに父の遺産が未分割である場合には、父の遺産のうち、母の法定相続分2分の1に相当する部分について、母の遺産として相続税の申告をする必要があります。

 ところで、相続税額の計算では、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6千万円のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという特例があります。
これが、配偶者の税額軽減特例というものですが、被相続人の遺産が未分割ならば、この特例の適用は受けることはできません。

 ご相談の事案のように、父の亡くなったあと母がすぐに亡くなった場合、母は父の死亡に係る相続税の申告について、配偶者の税額軽減特例を受けることはできないのではないかという疑問が生じます。

 このような事態に対応して、相続税法基本通達19の2-5では、相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が分割される前に、その相続(第1次相続)に係る被相続人の配偶者が死亡した場合において、第1次相続により取得した財産の全部又は一部が、第1次相続に係る配偶者以外の相続人等及びその配偶者の死亡に基づく相続に係る相続人等によって分割され、その分割により配偶者の取得した財産として確定させたものがあるときは、配偶者の税額軽減特例の規定の適用に当たっては、その財産は分割により亡くなられた配偶者が取得したものとして取り扱うことができるとしています。

 つまり、子ども達が、父の遺産の一部を母が取得したものとして確定させれば、それについては配偶者の税額軽減の特例が使えることとなります。

債務控除と医療費控除

2015-12-01

 国税庁ホームページに、質疑応答事例の新着情報が掲載されています(平27.11.25)。
今回は、所得税関係が中心で、医療費控除に関するものもあります。借入金で支払った医療費、共働き夫婦の夫が妻の医療費を負担した場合、父親の控除対象配偶者である母親の医療費を子供が負担した場合の3問です。

 ところで、医療費については、相続税の申告でもでてきます。被相続人の死亡の際に、相続人が支払った医療費は、被相続人の債務で相続開始の際現に存するものですので、相続税額の計算上、債務控除の対象とされます。

 ここで、被相続人の最後の所得税の申告、準確定申告について考えてみます。被相続人が死亡後に、被相続人の財産から被相続人の医療費を支払った場合、これは、被相続人の所得税の準確定申告で医療費控除の対象となるのでしょうか?

 答えは否です。

 その年の医療費控除の対象となる医療費の金額は、その年中に実際に支払われた金額に限られ、未払の医療費は現実に支払われるまで医療費控除の対象とはなりません。
ですので、被相続人の死亡後に支払われた医療費は、たとえ相続財産で支払われた場合であっても、被相続人が支払ったことにはならないということになり、被相続人の医療費控除の対象にすることはできないのです。

 では、相続人が支払い、相続税の申告で債務控除の対象とした医療費を、重ねてその相続人の所得税の確定申告で、医療費控除の対象とすることはできるのでしょうか?

 所得税の医療費控除の要件は、医療費を支出すべき事由が生じた時、つまり治療を受けたとき、又は、現実に医療費を支払った時の現況において、その対象とある親族(ここでは、被相続人)が、支払った人と生計を一にしていること、となります。

 したがって、その医療費の請求の基となった治療等を被相続人が受けた時に、その支払った親族が被相続人と生計を一にしていたのであれば、その医療費は、相続人であるその親族の医療費控除の対象にもなります。

前受家賃と債務控除

2015-11-25

 不動産の賃貸契約では、翌月分の家賃を当月末日までに支払う契約になっていることが多いようです。

 で、地主さんの相続では、この前受家賃が、相続税の申告上、債務控除の対象となるか疑問となります。この家賃については、まだ役務の提供、すなわち、賃貸物件の提供前に支払を受けたものですから、少なくとも、賃貸人は賃借人に債務を負っているということになりますよね。

 では、この1か月分の家賃は、賃貸人である被相続人の債務として、債務控除の対象となるのでしょうか?

 答えは否です。なぜならば、家賃の前払いを受けた賃貸人は、賃貸借契約に従ってその不動産を使用させるという債務(義務)があるのみで、賃貸人側が一方的にその賃貸借契約を解除するなどの場合を除き、その前払家賃の返還義務を負っていないとされているからです。

 すなわち、前受家賃自体には債務性はあるが、それは、対応する期間について、家屋を使用させるという義務だけなので、一般に債務控除の対象とはならないということになります。

土地建物の交換をしたとき

2015-11-23

 土地や建物について、使い勝手などの理由から、他の方が所有する同じような土地や建物に交換することもよく行われています。よく行われるのが近接地の交換で、話し合いで行われることが多いようです。
 その際に、気になるのが課税関係で、当事務所でも事前に相談を受けることがあります。

 個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。
 この特例を受けるためには、次の6つの要件を満たす必要があります。

(1) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
(2) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
(3) 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
(4) 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
(5) 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
(6) 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。

 この特例の適用にあたって、不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産は、棚卸資産となるため、対象になりません。

 で、このうちの(6)の要件について。交換譲渡しようとする土地の価額が500万円で交換取得しようとする土地の価額が400万円の場合、普通は取得しようとする土地の他に100万円をもらい、交換契約を成立させます。
 この実際にやりとりする100万円を交換差金といいます。これは、高いほうの土地の価額500万円の20%以内ですから、この(6)の要件を満たします。
 でも、交換譲渡しようとする土地の価額が500万円で、交換取得しようとする土地の価額が300万円ならば、時価の差額は200万円となって、500万円×20%=100万円より大きいので、(6)の要件を満たしません。

 それならば、500万円の土地のうち、持分5分の3を交換とし、5分の2を売買とすることができるならば、少なくとも5分の3部分は、譲渡所得税は課税されないのではないかと思う方がいます。このスキームはOKでしょうか?

 これについては所得税基本通達58-9に次の規定があります。
 「一の資産につき、その一部分については交換とし、他の部分については売買としているときは、法第58条(固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例) の規定の適用については、当該他の部分を含めて交換があつたものとし、売買代金は交換差金等とする。」

 この規定のポイントは「一の資産」にあります。上記の例では、「500万円の土地」が「一の資産」に該当します。ですので、上記の例では、全体として、交換特例の適用はありません。

 では、建物とその付属設備を一体として交換した場合、付属設備の部分だけを売買とすればどうなのかという疑問が生じます。
 この場合の結論もNO!です。交換特例の適用にあたっては、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれることになるため、建物とその附属設備を一体として交換した場合は、建物とその附属設備で「一の資産」となるからです(所得税法58条1項2号)。

 それならば、土地については交換契約を締結し建物については売買契約を締結した場合はどのようになるのでしょう。それが、国税庁のHPに照会事例として掲載されています。

 「甲は乙との間で、甲所有のA土地と、乙所有のB土地との交換契約を締結するとともに、A土地の上に存する甲所有のC建物については、乙に売買する旨の売買契約を締結することを予定しています」というものです。この場合も売買代金が交換差金として取り扱われるのでしょうか?

 結論から申しまして、その場合はこの売買代金が交換差金として取り扱われることはありません。
 というのは、さきほどの「一の資産」とは、所得税法58条1項各号に掲げる資産の種類の区分ごと(すなわち同一資産の種類ごと)の資産をいいます。
 それぞれの資産の種類は次のようになります。

一 土地(建物又は構築物の所有を目的とする地上権及び賃借権並びに農地の上に存する耕作に関する権利を含む。)
二 建物(これに附属する設備及び構築物を含む。)
三 機械及び装置
四 船舶
五 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)

 つまり、土地と建物は別の種類の資産となりますので、土地については交換特例を適用し、建物については売買契約により譲渡しても、全体で交換を行ったとして、課税されることはないということとなります。

未支給年金

2015-11-21

 相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集では、興味深い事例が掲載されています。

 事例7は「所得税の準確定申告書を提出し、還付金を受領している場合」です。この回答は、「所得税の準確定申告に係る還付金は、被相続人(父)に帰属する財産であり、相続財産に該当するため、第11表に記入します。」で、理屈を考えて納得される方も多いことかと思います。
 ところが、事例8は「支給されていなかった年金を受け取った場合」で、回答は「未支給年金については、被相続人の遺族が、未支給年金を自己の固有の権利(その者の権利)として請求するものであり、被相続人の死亡に係る相続税の課税対象にはなりませんので、第11表には記入しません。」。これって、えっ、と思われませんか?
 なぜ、遺族の固有の権利となるのでしょう。

 その根拠は厚生年金法37条にあります。それには、「保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。」とあります。つまり、
(1) 未支給年金は、受給権者の死亡後に、遺族の請求に基づく裁定があって初めて社会保険庁の年金支払義務及び支給金額等が具体的に確定すること。
(2) 裁定の請求を行う者は遺族であり、年金を支給する旨の通知(裁定があったこ との通知)は、遺族に対して遺族名義で行われること。
(3) 仮に死亡した受給権者に未支給年金に係る債権が帰属すると考えた場合、遺族の法律行為(請求)に基づいて既に死亡している受給権者に法律効果が帰属することになり相当でないこと。
 これらの理由により、相続財産ではなく、遺族の固有の権利とされているのです。
 また、平成7年11月7日の最高裁判決でも、「国民年金法19条1項は、『年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。』と定め、同条5項は、『未支給の年金を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。』と定めている。右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。」としています。

 では、税法の規定はどのようになっているのでしょうか?
 それは、相続税法でなく所得税法についての基本通達にあります。

所得税基本通達34-2(遺族が受ける給与等、公的年金等及び退職手当等)
 死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、その死亡後に支給期の到来するもののうち9-17により課税しないものとされるもの以外のものに係る所得は、その支払を受ける遺族の一時所得に該当するものとする。

 そう、遺族の所得税の対象となるのです。もっとも、一時所得の金額は、「総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)」で求められますので、他の一時所得、例えば、生命保険の一時金などがない場合、実際に課税価額に算入されることはないのではないかと思います。

未納固定資産税

2015-11-19

 国税庁のHPの「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」(平27.11.9)についてです。

 事例14「未納の固定資産税・住民税」は、被相続人の未納の税金が債務控除の対象となるというものです。

 解説がありました。「固定資産税と住民税の納税義務は既に成立しているため、相続開始日に納税通知書が送付されていない場合であっても、被相続人(夫)が亡くなられた年分の未納となっている固定資産税や住民税(注)は債務控除の対象となる債務に該当しますので、第13表に記入します。」

 これらの税金は、1月1日の所有者や居住者について課されるものですので、このような結論となるのです。

 で、間違いやすいのは、地主さんの相続案件です。

 地主さんの相続案件の場合は、相続税の問題もさることながら、亡くなられた方が営んでいた不動産賃貸事業の経費の問題が出てきます。この事業は、相続人に承継されることとなりますので、未納の固定資産税について、亡くなられた方の、亡くなられた年の所得の計算上、必要経費となるか、事業を承継された相続人の不動産所得の必要経費となるか、迷うところです。

 所得税の必要経費においては、その年の12月31日までに申告等により納付すべきことが確定した公租公課が対象となります。そして、年の中途において死亡又は出国した場合には、その死亡又は出国の時までに確定したものとなります。したがって、固定資産税や不動産取得税については、納税通知書が被相続人の生前に届いた場合だけ、被相続人の準確定申告における不動産所得の必要経費となります。

 ここが、相続税と所得税の違いとなりますので、混同しないようにしなければいけません。

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