成年後見人等養成研修を受講しました
税理士会主催の成年後見人等養成研修を受講しました。
この研修は丸々3日間、成年後見制度について学ぶものです。
支援を必要とする高齢者の意思の実現のための三大制度として、成年後見制度、財産管理の包括委任契約、信託契約があります。
従来は包括委任契約を利用して、高齢者の財産の管理等を長男等が行っていたかと思います。しかし、被支援者の意思決定能力に翳りが見え始めると、包括委任契約による財産管理では、本当に被支援者の意思を反映しているものかどうか疑問が生じますので、最近では、財産の処分等の場合には、本人の意思確認が求められ、具体的には、契約書の自署が求められるようになっています。
しかし、何らかの支援を求める高齢者の意思が明確な場合、本人の自署などを必要とせず、その高齢者のもともとの意思の実現ができないかとして、利用が進んでいるものが信託契約、そのなかでも民事信託というものです。
信託は文字どおり受託者を信じて託すものであり、被支援者であるに委託者の意思を契約により明文化し反映させたものです。ですので、その都度の被支援者の意思確認は不要となります。
そして成年後見制度ですが、成年後見制度では身上監護、つまり、身の上の手続きは得意ですが、財産の処分などは裁判所の決定を要します。そして、被支援者がどうしたいか分からないため、その決定は保守的になります。信託は、予め受託者の意思を契約で明示できますので、成年後見制度ではなく、認知などになる前に信託契約を結んでおくという方法を採りたいという方が増えてきているのだと思います。
また、成年後見にせよ、包括委任契約にせよ、後見人や委託者による不正が絶えないことより、受託の範囲がはっきりしている信託契約が委託者にとっても安全なのではないかと考えられています。もっとも、受託者監督人を設けたり、それなりに不正がなされないような仕組みを用意する必要があります。
ところが、最近の民事信託ブームでは、肝心の委託者の意思確認が不十分なまま契約されていたり、信託財産の分別管理が不十分だったりすることがあります。つまりは、包括委任契約をさらに便利にしたもののような使い方がされていることもあります。
今回、この研修を受講したのは、被支援者の意思を反映させ、次の世代に財産を受け継がせる場合等に、間違いのない方法でやりたいと思ったからです。民法的なこと、後見制度のこと、信託について、本来の目的やその限界などを学び直し、その方の意思に沿った財産の移転を確実に行いたいという動機からです。
内容は、後見制度だけでなく、民法的なこと、医学的なこと等多岐にわたり、様々な角度からの知識の整理となりました。制度の趣旨に合わないタックスプランニングなどでは、税務リスクがあるだけではなく、ご家族にもご迷惑を掛けることになりかねないです。
なお、全国各地の税理士会は成年後見支援センターを開設し、成年後見制度に関するご質問に対して無料で相談を受け付けているとのこと。研修を終了した会員は、成年後見人等の候補者として、各地の裁判所に名簿提出されるそうです。
写真は、研修終了者がもらえるガイドブック。セミナーレジュメはこれと別にあり、全部で5㎝背幅のバインダーで収まる厚さ。充実の研修でした。