夫婦連帯住宅ローン

2015-11-17

 国税庁のHPに「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」(平27.11.9)が公表されています。

おそらく、一般の方がご自分で申告されることを想定したものだと思いますが、次のような項目があります。

 被相続人の兄弟姉妹が相続した場合(2割加算1)、被相続人の孫が相続した場合(2割加算2)、被相続人と養子縁組を行った孫がいる場合(基礎控除)、生命保険金とともに払戻しを受ける前納保険料(みなし相続財産)、被相続人以外の名義の財産(預貯金)…等々。

 これらについて、解説や根拠無しで結論だけ端的に示しており、それなりに有用な情報となっています。

 この中で、今回は、「団体信用生命保険契約により返済が免除される住宅ローン」をとりあげましょう。
結論として、この住宅ローンは相続税額の計算において、被相続人の財産から控除できる債務、つまり、債務控除の対象とはなりません。債務控除の趣旨が、納税者の担税力を慮ったものということにあるところからも、それは当然のことですが、根拠としては、昭和44年5月26日付国税庁長官通達「団体信用生命保険にかかる課税上の取扱いについて」があります。
 したがって、一般的な住宅ローンについては、相続税の申告において何も考慮する必要はありません。

 では、ここからが応用問題です。
 ご夫婦で住宅を購入された場合に、夫婦連帯住宅ローンを組むことがあります。このローンは、保険契約者及び保険金受取人を金融機関、被保険者を連帯債務者である夫婦とする団体信用生命保険契約を、一般的な住宅ローンに付けたものです。この保険契約により、ご夫婦のいずれか一方の方が死亡又は高度障害となったとき、住宅ローンの全額が免除されることとなります。

 この場合も、一般の住宅ローンと同様に、どちらか一方に相続が発生した場合の相続税の申告で、何も考慮しなくていいのでしょうか?

 生存されている住宅ローンの連帯債務者は、亡くなられた連帯債務者の死亡により、自身の債務の免除を受けることとなります。
 そして、住宅ローンの生存配偶者負担分について、支払義務が消滅したことについては、相続税法8条のみなし贈与の規定「対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除等を受けた場合」に該当します。つまり、その部分は死因贈与を受けたとして、相続税の課税価格に加算されると考えるのが適当となります。

 結論として、夫婦連帯債務の住宅ローンがある場合は、生存配偶者については、自身が負担すべき住宅ローンの残債分の利益を被相続人から受けたとして、相続税の申告をすべきということになります。

 

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