遺言書を作成すべきケースは

どのような場合に遺言書を作成した方がいいのでしょうか?

遺言書を作成する目的としては、まずはトラブルを避けることにあると思いますので、
次のようなケースでは、遺言書を作成するといいでしょう。

1.相続人となる子ども達の仲があまりよくないとき

地元に残り、家に纏わるさまざまな諸事をこなしている子どもと、他の土地で暮らしている子どもとでは、思い入れが異なるのも無理のないところでしょう。

でも、子どもはすべて平等にという想いもあります。

想いは想い、実際の財産の管理は管理として、親が道筋を示しておくことで、スムーズは遺産分割をすすめることができることとなります。

2.子どもがいないとき

子どもがいない場合は、法定相続人は配偶者と両親、両親がすでに亡くなられている場合には、配偶者と兄弟となります。

ご相談に来られた案件では、ご夫婦が住宅ローンでやっと手に入れたご自宅について、兄弟の方が相続分を主張されたものがありました。

子どもがいない場合には、遺言により配偶者に確実に財産を遺してさしあげるようしておきたいところです。

また、兄弟には遺留分がありませんので、配偶者と兄弟が法定相続人となる場合は、遺言をすることにより、配偶者に全財産を遺すことも可能です。

3.法定相続人となる方が大勢いるとき

相続人となるべき方がすでに亡くなられていることがあります。

そのような場合、子が相続人となるなど代襲相続人が法定相続人となることとなります。
当事務所でも、法定相続人が10人を超えるケースを取り扱ったことがありますし、ご相談事案では、数十名となるケースもありました。

これらの場合、そもそも、全員により遺産分割協議を行うこと自体が難しいですし、全員の署名押印を頂くことが大変だということは、ご同意頂けるところだと思います。

不動産や金融資産について、遺言により行き先を決めておくと、後の手続きが容易に行えることとなります。

4.利害関係者が多いとき

法定相続人となる方が大勢いるときもそうですが、利害関係者が多いときも、遺産分割の際に問題が起こりがちです。

例えば、養子縁組や離縁などで複雑な親族関係となっている場合、再婚した場合、再婚相手に実子が生まれた場合、認知した子がいる場合などです。

5.遺言がないと財産を残せない方がいる場合

事実婚をしている場合は、遺言がないと、大切なパートナーに財産を遺せません。

再婚相手の連れ子を養子縁組していない場合は、遺言により財産を遺すことができます。

また、認知していない非嫡出子については、遺言により認知することもできます。

6.未成年の子どもがいるとき

親権者がいなくなる子どもについて、遺言により後見人を指定することもできます。

大切な子どもを託したい人がいるときは、遺言をしておくことも有効です。

7.会社経営者、自営業者、農家であるとき

経営する会社の株式や事業用資産、農地などが分散してしまうと、事業の継続が困難となる場合があります。

事業経営者は遺言により確実に後継者に事業用財産を遺すようにし、後継者以外の相続人に対しても、その後の生活に困らないよう、ある程度の道筋を示してあげることが大切です。

8.相続させたくない相続人がいるとき

親不孝な子には財産を遺したくないというときには、遺留分を含め、すべての相続分をなくしてしまうことができます。

これは『廃除』という制度です。

廃除の意思表示は遺言でもできますので、遺言執行人を指定しその意思表示をしておく方法があります。

もっとも、廃除が認められるためには、家庭裁判所の決定を必要とします。

ただし、家庭裁判所において廃除が認められない場合も多いため、廃除が認められなかった場合の遺産の分割の方法も、併せて指定しておくことが肝要です。

9.面倒を見てくれた家族等がいるとき

面倒を見てくれた家族には、その労をねぎらいたいと思うものです。

遺産分割において寄与分というものもありますが、これは、財産が増えることに貢献した相続人や財産の減少を食い止めることに貢献した相続人に認められるもので、認められる金額もその貢献度を金銭で測ったものとなります。

また、嫁や婿は通常相続人ではないため、自分のものとして寄与分を認められることはないのです。

直接、感謝の想いを示すには、遺言により財産を遺してあげるのも一つの方法です。

10.不動産以外に財産がないとき

不動産、特に、自宅以外にこれといった財産はない場合には、遺産分割自体が難しくなります。

特に配偶者がすでに亡くなられているときは、特定の子に遺すのか、売却して分けるのか、ある程度の道筋を立ててあげるのがいいでしょう。

また、不動産について、処分してもいいとお考えならば、併せてその旨を伝えておくことで、子がいつまでも悩まなくて済むこととなります。

また、小規模宅地等の減額特例といって、自宅敷地や事業用宅地の相続税評価額が8割減となる特例もあります。

複数の土地がある場合などは、どの土地にこの特例を適用させるのがいいかといった問題もありますので、事前に、税理士等にご相談されることも検討されることをお勧めします。

11.その他

行方不明な相続人がいる場合には、遺言により金融資産や不動産を遺す人を指定しておくと、遺産分割協議によらずに財産を確実に遺すことができます。

また、遺言により、お世話になった方に財産を遺したり、公益団体に寄附をしたりすることもできます。

さらに、亡くなった方の財産や債務について、すべてを調査するのは、それなりに大変な作業となります。

遺言を作成しない場合でも、簡単な財産や債務のリストを作成しておくだけで、遺されたご家族のご負担を軽くすることができます。

あとあとのトラブルを避けるため、最後の想いを伝えるため、遺言を上手に利用したいものです。

 

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