遺言でできること・できないこと
遺言に書くことができる内容には制限はありません。
ただ、その法的に実効性があるかどうかは別の問題です。
法的効力のある遺言事項で、基本的なものをまとめます。
遺産に関すること
1.遺産分割方法の指定
財産ごとに個別に誰に相続させるかを指定することができます。
例えば自宅は長男に、預金は配偶者に、都心のワンルームマンションは長女に相続させるといった項目を指定することができます。
2.相続分の指定
遺産の3分の1は配偶者に、仕事で成功している長男には6分の1を、障害のある次男には2分の1を、というように、各自が相続する割合を指定することも可能です。
※ 相続人でない方にも、1や2の方法で財産を遺すことができます。
3.相続人の廃除
「遺言書を作成すべきケース」でも触れましたが、遺留分のある相続人が親不孝な場合、遺言書に記載して、その相続人の相続権を取り上げるよう、遺言執行者に家庭裁判所に申し立ててもらうことができます。
具体的には、被相続人を虐待した場合、被相続人に対して重大な侮辱を与えた場合、被相続人の財産を勝手に処分した場合、賭博を繰り返して多額の借財を作りこれを被相続人に支払わせた場合などです。
相続人が廃除された場合、その子に相続権が代襲されることになります。
4.遺産分割の禁止
遺言により遺産分割を禁止することができます。
たとえば、相続人にまだ学生がいる場合、闘病中の方がいる場合など、遺産分割に一定の猶予を設けることができます。
もっとも、遺産分割を禁止できるのは5年以内の期間に限ります。
5.遺言執行者の指定
遺言の内容を確実に実現できるように、誰かに手続を任せることができます。
6.公益団体等に対する寄附
公益団体や学校法人などに遺言により寄附をすることができます。
この場合にも、遺言執行者を、併せて指定する必要があります。
寄附を受ける公益団体等が、その手続きを支援している場合や、信託銀行の商品として、そのサービスを用意しているものもありますので、事前に検討しておかれることをお勧めします。
被相続人の遺言により、相続財産を寄附する場合だけでなく、相続人が、相続や遺贈によって取得した財産を国や、地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合や、特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例があります。
7.財団法人設立のための寄附行為
財団法人の設立のための寄附行為を遺言で行うことができます。
遺言執行者を必ずしも指定する必要はなく、定められていない場合には、相続人がその手続きを執行することになります。
寄附行為を遺言で行う場合には、目的や資産に関する規定だけは、必ず定めなければならないことになります。
8.財産を信託法上の信託財産とすること
相続人が財産を管理できないような場合に、遺言で、財産の管理を信頼する方に託すことができます。
この管理を託す方が「受託者」、財産を遺したい方が「受益者」となります。
信託銀行でも、財産承継信託という商品名でサービスを用意しています。
身分に関すること
身分に関することは基本的には遺言ではできません。
でも、次のようなことは、遺言によって行うことができます。
1.認知
婚姻外で生まれた子供の認知をすることができます。
まだ生まれていない子(胎児)についても、遺言による認知ができます。
2.後見人の指定及び後見監督人の指定
万一に備えて未成年者の後見人を指定することができます。
遺言ではできないこと
1.認知以外の身分的な行為
遺言により、結婚や離婚、養子縁組をすることはできません。
2.借金などの債務の分割を指定すること
金銭債務のように分割できる債務については、相続と同時に法定相続分に応じて分割されることとなります。
遺言により債務の分割を指定した場合、相続人の間では、その指定は有効としても、債権者に対しては、効力を持たないこととなります。
これは、遺産分割協議の場合でも同じです