相続税の税務調査対策
相続税の申告書を提出した後に、税務調査の連絡がくることがあります。
相続税の税務調査は、平成23年の国税通則法改正前までは、だいたい翌年又は翌々年の秋に行われることが多かったように思います。
しかし、国税通則法改正後では、その傾向にも変化が見られるように思います。
相続税の納税義務者となるのは、一般の方ですので、できることならば、税務調査がないように、申告時にできることをすることとしています。
当事務所では、申告書に税理士法33条の2に基づく「書面添付」を行っております。
書面添付の効果
法33条の2の書面は、申告書について、税務の専門家の立場からどのように調製されたかを明らかにするものです。
法33条の2の書面は、調査の要否の判断等に積極的に活用されます。
法33条の2の書面を提出することにより、多くの場合、税務調査前に税理士に対して意見聴収が行われます。
意見聴収の結果として調査の必要性がないと認められた場合には、実地調査が行われないこともあります。
意見聴取が行われた後に修正申告書が提出された場合の加算税の取扱いについて、国税庁のHPにおいては、次のように示されています。
事務運営指針において、
「意見聴取を行い、その後に修正申告書が提出されたとしても、原則として、加算税は賦課しない」こととされているほか、
「修正申告書が意見聴取の際の個別・具体的な非違事項の指摘に基づくものであり、『更正の予知』があったと認められる場合には、加算税を賦課する」こととされていることから、
修正申告書を提出するに至った事情等を個々に判断した上で、取り扱われることになると考えられます。
したがって、書面添付を行った場合においても、加算税が課されないとはいえませんが、
納得のいく結果となるように、主張をし、話し合いを尽くします。
申告書の作成において気をつけているところ
申告書の作成においては、「相続税の申告のためのチェックシート」を活用し、可能な限りの証憑書類を取り寄せて、それに基づいて行っています。
相続税の税務調査における非違事項は、圧倒的に金融資産の実質的な所有者に関するものです。
被相続人の名義財産か、相続人の固有の財産なのかは、相続人自身でも、よくわからない場合もあります。
したがって、次のように聞き取り調査をし、さまざまな証拠書類を確認してその判別をしております。
(1) 被相続人のご経歴やご趣味はもちろん、相続人であるご家族の方のご経歴や過去の所得の状況を確認させて頂いております。その際に、少なくとも過去6年間の通帳や定期預金証書、有価証券の取引状況、所得税の確定申告書等を確認させて頂いております。
(2) 被相続人が被保険者である保険契約だけでなく、被相続人が契約した、ご家族を被保険者とした保険契約がないか、聞き取りに基づく資料のご提供により確認しております。
(3) 被相続人の毎年の収入から、必要な生活費を含む通常の出金を差し引いた残りの資金残高の累計が、毎年の金融資産合計と概ね一致しているかどうかの確認を致します。
(4) 会社経営者の方や個人事業主の方、不動産取引のある方の場合、株式の変遷や評価、会社との取引の状況、事業の状況、不動産の権利関係などを確認致します。
(5) (1)~(4)より、被相続人及び相続人ごとに預貯金内訳表や残高推移表、財産明細等をまとめ、資産残高推定表等をまとめます。
(6) これらの結果についても、法32条の2の書面に記載致します。
不動産の評価について
不動産の評価については、実地主義に基づいて行っていますが、不動産の評価額に関しましては、税法以外の様々な法律の影響を及ぼしています。
したがって、必要に応じて、他の専門家を共同で、間違いのない評価にあたっており、作成した図面等を申告書に添付しております。