限定承認と課税関係
限定承認をした場合には、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を受け継ぐという選択が可能となります。
しかし、税法の世界では、限定承認をした場合には、特異な課税がされますので、注意が必要です。
限定承認をした場合の被相続人に対する課税
所得税法では、限定承認をした相続財産に、土地・建物のような資産があった場合には、これらの資産は、被相続人が相続人に対して、時価で譲渡したものとみなして、「みなし譲渡」所得課税を行うこととしています。
実際は、この所得については、相続人が準確定申告により申告し、所得税を納付することとなります。
ただし、この所得税額についても、被相続人の債務ですので、相続財産額を超える部分は切り捨てられることになります。
相続人に対する相続税の課税
マイナスの財産は、相続税の申告における債務控除の対象となりますが、プラスの財産からマイナスの財産を控除した残額が、相続税の基礎控除額より大きい場合は、相続税の申告が必要となります。
なお、この場合は、時価ではなく相続税評価額で評価します。
限定承認の課税上のメリットとデメリット
▼メリット
・マイナスの財産がプラスの財産が多い場合は、相続財産の中に含み益のある資産があっても、結局は、譲渡所得税は切り捨てられることになること
・単純承認をした場合あっても、含み益のある資産をすべて売却する予定であるならば、被相続人に譲渡所得税が課される限定承認の方が、住民税の課税がない分、譲渡についてのトータルの税負担が少なくなること
単純承認:譲渡所得課税(被相続人の取得費、取得時期を引き継ぐ)
限定承認:譲渡所得課税 譲渡所得課税(含み益がないので実質的に課税なし)
(みなし譲渡)
▼デメリット
・マイナスの財産よりプラスの財産が多い場合でも、遺産のすべてを売却したものとみなしての譲渡所得課税が行われてしまうこと
・居住用財産の3000万円控除などの適用が受けられないこと限定承認した場合は、被相続人から相続人への譲渡なので、3000万円控除の要件である「売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと」の要件を満たさないこととなります。
単純承認の場合は、相続により取得した財産について、所有者として住んでから譲渡すれば、3000万円控除を受けることができます。