生命保険等の一時金の支払調書と契約者変更記載

2015-01-21

生命保険契約では、保険料負担者である「保険契約者」、保険事故発生の対象とされる「被保険者」、そして、「保険金受取人」の三者が誰であるかにより課税関係が変わります。これについては、本サイトを参考にして頂くとして、ここでは、保険期間中に保険契約者を変更した場合の課税関係について述べてみようと思います。

生命保険契約等について契約者の変更があった場合には、次のような課税関係が発生します。

(1) 死亡による契約者の変更
契約者と被保険者が異なる生命保険契約等について、契約者が保険期間中に死亡した場合、新しく契約者となった人がその契約の権利を引き継ぐことになります。このため、契約者が死亡した時点で、「生命保険契約に関する権利」として評価された金額(解約返戻金相当額)が相続税の課税対象となります。

(2) 死亡によらない契約者の変更
旧契約者の死亡によらない契約者の変更であれば、その時点では課税関係は生じません。契約者に対して、被保険者の死亡や満期等により保険金等が支払われたときに、初めて相続税や贈与税、所得税等の課税対象になります。

○ 受取保険金のうち保険金受取人以外の者が負担した保険料相当部分
受取保険金のうち、保険金受取人以外の者が負担した保険料の金額の保険事故発生の時までに払い込まれた保険料全額に対する割合に相当する部分は、その保険料負担者から、相続又は贈与により取得したものとみなされます。

○ 受取保険金のうち保険金受取人が負担した保険料相当部分
保険金受取人の所得税(一時所得)及び住民税の対象とされます。一時所得の計算では、受取保険金のうち保険金受取人が負担した保険料相当部分から、受取人が負担した部分の金額を控除し、さらに50万円を差し引いた金額の二分の一が課税対象となります。

ところで、現在、生命保険会社等から税務署に対して支払調書が提出されるのは、次の場合です。
(1) 1回の支払金額が100万円を超える死亡保険金、満期保険金、解約返戻金等が支払われた場合
(2) 同一人に対して1年間に20万円を超える年金給付金が支払われた場合

つまりは保険契約者を変更したとしても、生命保険会社等から支払調書は提出されません。
そのため、次のような問題が生じていました。

(1) 死亡による契約者変更の場合
生命保険契約に関する権利について、相続税の課税漏れとなることがありました。

(2) 死亡によらない契約者変更の場合
全額を一時所得の収入金額とし、旧契約者が負担した払込保険料を含む保険料の全額を収入を得るために支出した金額として、控除し申告している場合があります。
極端なケースでは、保険事故発生直前に契約者を変更することにより、本来、受取保険金相当額を新契約者が旧契約者から贈与されたとみなされるにもかかわらず、一時所得の申告で済ませている場合もあります。

そこで、平成27年度税制改正大綱では、生命保険契約等の一時金の支払調書等について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載するという項目が入れられています。

(1) 保険会社等は、生命保険契約等について死亡による契約者変更があった場合には、死亡による契約者変更情報及び解約返戻金相当額等を記載した調書を、税務署長に提出しなければならないこととされます。

(2) 生命保険金等の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等を記載することとされます。

この改正は、平成30年1月1日以後の契約者変更について適用される予定です。

 

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