債務控除と医療費控除
国税庁ホームページに、質疑応答事例の新着情報が掲載されています(平27.11.25)。
今回は、所得税関係が中心で、医療費控除に関するものもあります。借入金で支払った医療費、共働き夫婦の夫が妻の医療費を負担した場合、父親の控除対象配偶者である母親の医療費を子供が負担した場合の3問です。
ところで、医療費については、相続税の申告でもでてきます。被相続人の死亡の際に、相続人が支払った医療費は、被相続人の債務で相続開始の際現に存するものですので、相続税額の計算上、債務控除の対象とされます。
ここで、被相続人の最後の所得税の申告、準確定申告について考えてみます。被相続人が死亡後に、被相続人の財産から被相続人の医療費を支払った場合、これは、被相続人の所得税の準確定申告で医療費控除の対象となるのでしょうか?
答えは否です。
その年の医療費控除の対象となる医療費の金額は、その年中に実際に支払われた金額に限られ、未払の医療費は現実に支払われるまで医療費控除の対象とはなりません。
ですので、被相続人の死亡後に支払われた医療費は、たとえ相続財産で支払われた場合であっても、被相続人が支払ったことにはならないということになり、被相続人の医療費控除の対象にすることはできないのです。
では、相続人が支払い、相続税の申告で債務控除の対象とした医療費を、重ねてその相続人の所得税の確定申告で、医療費控除の対象とすることはできるのでしょうか?
所得税の医療費控除の要件は、医療費を支出すべき事由が生じた時、つまり治療を受けたとき、又は、現実に医療費を支払った時の現況において、その対象とある親族(ここでは、被相続人)が、支払った人と生計を一にしていること、となります。
したがって、その医療費の請求の基となった治療等を被相続人が受けた時に、その支払った親族が被相続人と生計を一にしていたのであれば、その医療費は、相続人であるその親族の医療費控除の対象にもなります。