相続税の計算と養子の数

2017-02-04

 民法では、養子は何人でもとることができます。また、養子はその縁組の日から、実子と同様に扱われます。
 しかし、相続税法においては、この取扱いは少し変わってきます。なぜなら、相続税の計算をする場合、次の4つの項目については、法定相続人の数を基に行うからです。

(1) 相続税の基礎控除額
 課税遺産総額は課税価格の合計額から基礎控除額を控除して計算します。
 相続税の基礎控除額は次の算式により計算します。

  相続税の基礎控除額=3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
  課税遺産総額=相続税の課税価格の合計額(注)-基礎控除額

 (注) 相続又は遺贈により取得した財産の価額+みなし相続財産-非課税財産+相続時精算課税贈与財産-債務及び葬式費用の額+3年以内贈与財産の各人毎の合計額

(2) 生命保険金の非課税限度額
 死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人を除きます。)である場合、全ての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。

  500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

(3) 死亡退職金の非課税限度額
すべての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人を除きます。)が受け取った死亡退職手当金等を合計した額が、次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

(4) 相続税の総額の計算
 相続税の総額は、(1)の課税遺産総額を、その被相続人の法定相続人の数に応じた相続人が民法で規定する法定相続分等に応じて取得したものとした場合におけるその各取得金額をもとにして計算します。

 これらをみれば法定相続人の数が多ければ多いほど、相続税額が少なくなる仕組みがわかります。

 そこで、養子をたくさんとることにより、法定相続人の数を増やすことが盛んに行われていました。それでは、課税の公平の見地から、問題がないとはいえません。そこで、上記の計算における「法定相続人の数」について、相続税法上は制限を設けることとなったのです。

 上記の計算において「法定相続人の数」に含める養子の数は次のようになります。

(1) 被相続人に実の子供がいる場合 … 1人まで
(2) 被相続人に実の子供がいない場合 … 2人まで

 さらに、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、「法定相続人の数」に含める養子の数とはしないこととされました。

 もっとも、被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人など一定の養子については、規制の対象となる養子としては扱われないとされています。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2018 小林磨寿美税理士事務所 All Rights Reserved.