戸籍関係書類の収集と法定相続情報証明書制度

2017-01-15

 被相続人の遺産の名義変更をするためには、金融資産であっても、不動産であっても、車であっても、戸籍関係書類の提出を求められます。相続税の申告の場合も同様です。

 戸籍の所在が判っている場合の取得手続き自体は市役所の窓口で頼めばいいだけですが、問題は被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本を集めなければならないことです。基本的に被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて収集する必要があるのですが、明治以来何度かの戸籍制度の改正があったことがこの収集を面倒にしています。近いところでは昭和32年、平成6年の改正がありますが、これにより戸籍の書き替えが行われ、その際、情報の欠落が生じたため、改製される前の戸籍、改製原戸籍の取得が必要となるのです。

 もっとも被相続人が出生地である本籍地でそのまま死亡した場合などは、市役所等の窓口で出生から死亡までの戸籍を下さいと依頼すればそろえてくれますので、その場合はたいして手間はかかりませんが、転居、戸籍の移動などがありますと、出生から死亡までの戸籍を漏れなく収集するのはそれなりの知識と手間を要します。

 昨年10月5日、法務省が「法定相続情報証明書制度」を始めると発表しました。これは法務局がこの戸籍関係書類等に代わる「証明文付きの法定相続情報の写し」を発行する制度です。新制度でつくる証明書のイメージはこちらです。

 これにより、煩雑な戸籍収集作業から解放されるかとなると、そうではないのです。

 この制度のしくみは、相続人が法務局に、(1)「被相続人の戸籍関係の書類等」、(2)「(1)に基づく法定相続情報(被相続人の氏名や本籍等,相続人の氏名や本籍,続柄や法定相続分などの情報)」を提出することにより、登記官が内容を確認して法定相続情報証明書交付するものです。したがって、1度は今まで通りの戸籍収集作業をする必要があるのです。

 この法定相続情報証明書は、法務局において登記手続きでの利用ができるようにという趣旨で導入が予定されているものですが、相続手続きに係わる各機関がこの法定相続情報証明書を採用するならば、いままで登記用、銀行用、証券会社用、税務申告用等、何組もの戸籍関係書類を用意する必要があった(手続きにおいて、返却して下さいと希望すれば、戻ってくる場合もあり、使い回しのできることもあったにせよ)のに比べ、楽になることは間違いありません。各機関に置いても、それぞれの責任で内容のチェックをする必要がなくなるため、手続きに要する時間が短縮されることも考えられます。

 今月末(2017.1)まで、この制度についてのパブリックコメントを募集中です。これを経て、5月末ごろまでの制度導入が予定されています。

 

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