エステートプランニング

2016-12-06

 相続対策のために生前贈与や生命保険の加入、遺言などをする場合があります。しかし、実際に行われているものを見ますと、対策として行われているものが、個別に関連なく行われており、全体として見た場合の視点が欠けているように思います。

 必要なのは総合的な生前相続対策です。エステートプランニングと言われることもあります。このエステートプランニング、アメリカなどの例ですと、撤回不能信託(トラスト)とジョイント・テナンシーを利用したものが多いようです。トラストを利用すると、検認裁判不要で相続人に財産を移すことができること、財産を承継させたい人に確実に財産を遺せることなどから、エステートプランニングでは、トラスト利用が必須とされているようです。

 さらに、州法によっては、撤回不能信託とした場合、遺産から外すことができるため、有効な相続対策になるのです。しかし、残念ながら日本では、撤回可能信託か撤回不能信託かによる税制上の区別はなく、委託者と受益者が異なることとなったときに課税関係が発生するということになります。
そうであっても、信託が有効な生前対策の1つであることは、これまでもご説明したとおりです。

 もう一つのジョイント・テナンシーというものですが、こちらは、不動産等を所有する場合によく使われる形態で、各所有者はそれぞれ所有権を等分に持つというものです。ただし、共有とは異なる合有財産権(Joint Tenancy)という権利に基づくものです。

 合有財産権は、(1)同一の不動産に関する同一の譲渡行為によって(unity of title)、(2)2名以上の者が同一の時に始期を有する(unity of time)(3)同一の権利(unity ofinterest)を(4)共同所有する(unity of possession)という、4つのunity(同一性の要件)を備えた財産権と説明されています。しかし、この最大の特徴は、合有権者の1人が死亡した場合、その有した権利が相続の対象とならずに生存する他の合有権者に帰属することにあります。

 もっともこれが、日本でも有効であるかというと、ジョイント・テナンシーという権利は日本にはありませんが、かの国でそのような権利を形成していた場合、我が国でも民法的な権利関係としては、被相続人の相続財産を構成しないということはいえます。
 しかし、税法的には、被相続人の合有不動産権が移転したことによる生存合有不動産権者の権利の増加は、「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当するため、生存合有不動産権者が移転を受けた被相続人の合有不動産権の価額に相当する金額については、被相続人から贈与により取得したものとみなされることになるとされています。つまりみなし贈与、あるいは遺贈ですね。

 それならば、ジョイントテナンシーは相続対策としてダメかというと、争族対策としての利用がないわけではない。大事なのは、各手法にどのようなメリットとデメリットがあり、どのように組み合わせると、全体として有効な対策となるかということをプランニングすること、それがエステートプランニングということになります。

 

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